書斎や仕事部屋に書を飾る|手元から目を上げたときに見える場所

在宅で仕事をされる方が増えてから、書斎や仕事部屋に飾りたいというご相談が少し増えました。

机の前に何か掛けたい。画面ばかり見ているので、目を上げたときに何かあるといい。そういう理由が多いです。

この部屋は、他のどことも条件が違います。今日はそのことを書いてみます。

目次

近い距離で見る場所

書斎や仕事部屋の特徴は、作品との距離が近いことです。

机の前の壁に掛けるなら、五十センチから一メートルほど。座っている位置から、手を伸ばせば届くくらいの距離です。

これは家のなかでいちばん近い距離かもしれません。玄関は立って数十センチですが、見ている時間は数秒です。リビングは何メートルか離れます。書斎は、近くて、長い。

近い距離で見るということは、細部が見えるということです。

一文字ずつの筆の入り方、墨の濃淡、紙の繊維の質感。離れて見ていたら気づかないところまで、目に入ってきます。

ですので、書斎に飾る作品は、近くで見たときの印象で選んでいただくのがいいと思います。展示会でも、実際に近づいて見ていただくとわかるのですが、写真と実物ではまったく違って見えます。

小さい作品が合う理由

近い距離なので、大きな作品は必要ありません。

むしろ、大きすぎると視界を圧迫します。机に向かっているときに、正面に大きなものがあると、なんとなく落ち着かない。

小ぶりな作品を、机の上や本棚の一角に置く。あるいは目の高さより少し上の壁に、小さめの一点を掛ける。それくらいがちょうどいいことが多いです。

書斎は、家のなかで作品と自分の距離がいちばん近い部屋です。近い分、小さくても存在感が出ます。

机の上に直接置く場合は、置き場所に少し工夫が要ります。

書類やパソコンの周りは、日々ものが動く場所です。作品を平置きすると、上に何かを重ねてしまう危険があります。スタンドで立てて、机の奥のほうに置く。あるいは、机の上ではなく、脇の棚や本棚の一段に置く。

本棚に置く場合は、本と本の間ではなく、一段を空けてそこに置くと収まりがいいです。周りに詰まったものがあると、作品が埋もれてしまうので。

サイズの考え方についてはレインボー般若心経のサイズ別ガイドにもまとめました。

画面の近くに置くということ

いまの仕事部屋には、たいていモニターがあります。

一日の大半、光を発する四角い画面を見ている。それがこの部屋の現実です。

作品を画面の近くに置くと、視線を移すだけで見えます。ほんの数秒、画面から目を離して、色を見る。それだけで、目の疲れ方が違うという方がいらっしゃいます。

画面は自ら光っていますが、書の作品は光を反射しているだけです。この違いは、目にとってはけっこう大きいのだと思います。

置く位置としては、モニターの真横か、その少し上あたり。首を大きく動かさずに視線だけで届く範囲がいいと思います。

画面に映る場所として

在宅で仕事をされる方から、思いがけない使い方を聞いたことがあります。

オンライン会議の背景に入る位置に、作品を掛けているという話でした。

画面越しに話しているとき、相手には自分の背後が映ります。何もない白い壁だと味気ないし、本棚が映ると生活感が出る。そこに一点あると、話のきっかけにもなると。

「それは何ですか」と聞かれることがあるそうです。般若心経だと答えると、たいてい驚かれる。そこから会話が始まることもある。

この使い方を考える場合、掛ける位置は自分の斜め後ろあたりになります。真後ろだと自分の頭で隠れてしまうので。それから、カメラに対して正面を向く角度にしておくと、歪まずに映ります。

光の当たり方も見ておくといいです。窓を背にしていると作品が暗く映りますし、ライトが反射すると白く飛びます。会議の前に一度、自分の画面で確認してみるといいと思います。

集中の合間の視線

仕事中に作品を眺める時間は、そう長くありません。

考えごとに詰まったとき。ひとつ終わって、次に移る前。電話が終わったあと。そういう、切り替わりの瞬間に、ふと目が行く。

数秒のことです。じっくり鑑賞するわけではありません。

でも、その数秒が意外と効くという話を聞きます。画面から目を離して色を見ると、頭のなかが一度リセットされる感じがあると。

般若心経を飾っているから集中できる、というような話ではないと思います。ただ、視線を送る先が画面以外にもあるということ。それだけのことかもしれませんが、一日に何十回もあると、積み重なるのだと思います。

光と、反射のこと

書斎で気をつけたほうがいいのは、光の反射です。

デスクライトを使っている方は多いと思います。この光が額のガラスに反射すると、作品が見えにくくなります。

近い距離なので、反射の影響も大きく出ます。リビングのように離れていれば角度で逃げられますが、机の前だと逃げ場がありません。

対策としては、掛ける角度を少し変える。あるいは、反射の少ないアクリルやガラスを使った額装にする方法もあります。

窓が近い場合は、日中の光の入り方も見ておくといいです。直射日光が長く当たる位置は、作品の色が変わっていく原因になります。

一人で向き合う部屋として

書斎や仕事部屋は、寝室と同じく、基本的に一人で使う部屋です。

人に見せることを考えなくていい。好きなものを置ける部屋です。

ただ、寝室と違うのは、そこで頭を使っているということかもしれません。眠る場所ではなく、働く場所。緊張している時間が長い部屋です。

そういう場所に、意味を求めなくていいものが一点あるというのは、悪くないのではないかと思います。

般若心経は二百六十二文字のお経ですが、仕事中にその意味を考える方はいないと思います。ただ色がある。文字が並んでいる。それだけで十分です。

書斎に置く場合は、むしろ意味を考えないほうがいいのかもしれません。考える仕事をしている部屋なので、そこに考えなくていいものがあることに、意味があるような気がしています。

他の部屋に飾る場合は玄関リビング寝室の記事にまとめています。色墨で書く作品についてはレインボー般若心経とはをご覧ください。

作品はレインボー般若心経の作品一覧からご覧いただけます。

机の前に置いたらどうだろう、と想像しながら見ていただけたらうれしいです。

この記事を書いた人

岩手県遠野市生まれ。外資系船会社勤務を経て、結婚・子育てをしながら書道の道へ。文化書道にて免許を取得後、板橋の書道大学で漢字・かな・古典臨書・般若心経を学ぶ。吉川蕉仙氏に師事し、日展入選2回、読売書法会幹事を務めるなど高い技術を持つ。2016年より田園調布にて「清景書道教室」を主宰。パリのジャパンエキスポ招待出展や、銀座・麻布十番での個展など国内外で活動。「日常に溶け込み、愛でていただける書」をコンセプトに、日常がより充実する書道教室を展開している。

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