寝室に飾りたい、というご相談は、玄関やリビングほど多くはありません。
ただ、実際に飾られた方からいただく感想は、他の部屋とは少し違うものが多いです。
眠る前に目が入ると落ち着く。朝起きて最初に見るものが色だと、一日の入り方が変わる。そういうお話を伺うことがあります。
寝室は、人に見せる場所ではありません。自分だけの場所です。そのぶん、作品との関わり方も他の部屋とは違ってくるのだと思います。
一日の終わりと、始まりに
寝室で作品と目が合うタイミングは、だいたい二回です。
眠る前と、起きたとき。
眠る前は、一日が終わるところです。疲れていたり、考えごとを抱えていたりする。そこで視界に色が入ってくると、頭のなかが少し切り替わるという方がいらっしゃいます。
起きたときは、まだぼんやりしている時間です。何も考えていない状態のところに、色だけが入ってくる。
この二つの時間帯は、どちらも意識がゆるんでいるときです。仕事のことも予定のことも、いったん外れている。そういうときに目に入るものは、日中に見るものとは違う入り方をするのかもしれません。
色の選び方
寝室に飾る作品を選ばれる方は、落ち着いた色を選ばれることが多いです。
青、緑、深い紫。それから、色数を抑えた作品。眠る前に見る場所なので、あまり刺激の強い色は避けたいという感覚があるようです。
これはよくわかります。赤や橙のような強い色は、目が覚める方向に働きます。朝の部屋には合っても、夜の部屋には少し強いかもしれません。
ただ、これも人によります。実際、鮮やかな色の作品を寝室に選ばれた方もいらっしゃいます。朝起きて最初に見るものが明るいほうがいいから、という理由でした。
その方は、眠る前は照明を落とすので作品はほとんど見えない、朝の光で見るときのことだけ考えて選びたい、とおっしゃっていました。なるほどと思いました。
ご自身がどちらの時間に作品と関わりたいか。それによって選ぶ色は変わってくるのだと思います。
朝に見たいのか、夜に見たいのか。ご相談のときにこれを伺うと、提案する作品がかなり絞られます。
色の考え方についてはレインボー般若心経とはにも書きました。
どこに掛けるか
寝室は、ベッドの位置で見える場所が決まってしまう部屋です。
ベッドの頭側の壁に掛ける場合、寝ている本人からは見えません。部屋に入ってきたときに見える位置になります。ホテルの部屋のような配置ですね。
ベッドから見える正面の壁に掛けると、横になったときに視界に入ります。眠る前に見る、という関わり方をしたい方はこちらです。
サイドテーブルの上に小ぶりな作品をスタンドで立てる方もいらっしゃいます。この場合は、かなり近い距離で見ることになるので、細かい筆致まで目に入ります。
寝室は、他の部屋より低い視点から見る場所です。立って見るのではなく、横になって、あるいはベッドに腰掛けて見る。掛ける高さも、その視線に合わせたほうがいいかもしれません。
もうひとつ、エアコンの風が直接当たる位置は避けたほうがいいです。寝室は寝ている間ずっと空調をつけている方も多いので、同じ場所に長時間風が当たり続けることになります。紙は乾燥にも湿気にも反応するので、風が当たり続けると額のなかで波打ってくることがあります。
窓のすぐ横も、結露が出る季節は少し気をつけたい場所です。壁から数ミリ浮かせて掛けるだけでも違ってきます。
サイズの考え方はレインボー般若心経のサイズ別ガイドにまとめています。
照明との関係
寝室は、照明が特殊な部屋です。
天井の主照明を使う時間より、間接照明やベッドサイドのランプで過ごす時間のほうが長い方も多いと思います。暖色の弱い光です。
この光の下では、色墨の見え方がかなり変わります。
青や緑のような寒色は沈みます。暗い部屋では、ほとんど見えなくなることもあります。逆に、赤や橙、金は暖色の照明と相性がよく、温かく浮かび上がります。
もし夜に作品を見たいのであれば、この点は考えたほうがいいかもしれません。青系の作品を選ばれる場合は、朝の自然光で見ることを前提にする。夜も見たいなら、暖色系を選ぶか、作品の近くに光源を置く。
窓からの光がどう入るかも見ておくといいです。朝日が直接当たる位置は、作品にとってはあまりよくありません。日焼けで色が変わっていきます。
一人の場所だからこそ
玄関は通る場所、リビングは家族と過ごす場所です。寝室は、一人になる場所です。
誰かに見せることを考えなくていい。似合うかどうかも、周りとの調和も、あまり気にしなくていい部屋だと思います。
好きな色を選んでいいのだと思います。人からどう見えるかではなく、自分が見て落ち着くかどうか。それだけで選べる場所は、家のなかでもそう多くありません。
リビングに飾るものを選ぶときは、どこかで家族の目や来客の目を考えます。玄関はもっとそうです。家の顔になる場所なので、自分の好みだけでは決めにくい。
寝室にはそれがありません。誰にも説明しなくていいし、誰の同意も要らない。ずっと気になっていた色があるなら、それを選べる部屋です。
展示会でも、ご自宅のどこに飾るかを伺うと、寝室と答えられた方は選ぶ作品が変わることがあります。最初はリビング用に無難な一点を見ていたのに、寝室だと聞いた瞬間に、まったく違う色に手が伸びる。そういう場面を何度か見てきました。
以前、ご自宅に作品を迎えてくださった方が「部屋に馴染んで、毎日眺めていても新鮮な気持ちになる」と書いてくださったことがありました。寝室のような、毎日必ず目に入る場所こそ、そういう作品であってほしいと思っています。
意味を考えなくていいのは、他の部屋と同じです。二百六十二文字の経典だということも、眠る前には忘れていていいと思います。ただ色があって、それが視界に入ってくる。それだけの関わりで十分です。
般若心経そのものについては般若心経とはに、他の部屋に飾る場合は玄関とリビングの記事にまとめました。
作品はレインボー般若心経の作品一覧からご覧いただけます。
眠る前と、起きたとき。その二回に目が合う一点を、探していただけたらうれしいです。
