般若心経を玄関に飾る|方角のことと、飾る場所の選び方

作品をお迎えいただいた方から、あとになって「玄関に飾りました」とご連絡をいただくことがあります。

写真を送ってくださる方もいて、拝見すると、馴染んで収まっていたりする。玄関って、実は書と相性がいいのかもしれないと、そういうときに思います。

今日は、玄関に般若心経を飾ることについて、よくいただくご質問にお答えする形で書いてみます。

目次

玄関に飾る方が多い理由

なぜ玄関なのかを伺うと、だいたい似たようなお答えが返ってきます。

家に帰ってきたときに、目に入る場所だから。それから、出かけるときにも一度見るから。一日に二回、必ず目が合う場所なんですね。

リビングだと、テレビを見ていたり家族と話していたりで、意識が作品に向く時間は案外少ないそうです。でも玄関は、靴を履くときや脱ぐときに、ほんの数秒でも立ち止まる。その数秒に作品が入ってくる。

お客様がいらしたときに最初に目にする場所、という理由をおっしゃる方もいます。家の印象を作る場所として選ばれるということですね。

方角は気にしたほうがいいのか

これはよくいただくご質問です。

結論から言うと、私は方角についてはあまり申し上げないようにしています。

風水や家相の考え方だと、玄関の方角によって置くものの色を変えるといった話が出てきます。それを信じていらっしゃる方が、その考えに沿って選ばれるのは自然なことだと思います。

ただ、私は書家であって、その分野の専門家ではありません。ですので「北向きの玄関だからこの色にしましょう」というようなことは、責任を持って申し上げられないんです。

そのかわり、こうお伝えしています。方角よりも、光の入り方を見てください、と。

光の入り方を見る

玄関は、家によって光の条件がまったく違います。

日中でも薄暗い玄関もあれば、ドアのガラスから光が差し込んで明るい玄関もある。この違いは、作品の見え方にかなり影響します。

明るい玄関の場合、色墨の発色がよく見えます。青や緑のような寒色系も沈まず、色の重なりまで目に入ってくる。ただ、直射日光が当たる場所は避けたほうがいいです。紙も墨も、長く日に当たると色が変わっていきます。

薄暗い玄関の場合は、明るめの色を選ぶと空間が少し軽くなります。黄色や橙、それから金を使った作品は、光が少ない場所でも沈みません。逆に濃い色の作品を暗い玄関に置くと、せっかくの色が見えにくくなってしまうことがあります。

ご相談いただくときに玄関の写真を送っていただくのは、この光の条件を見たいからです。

どのくらいの大きさが合うか

玄関は、家のなかで意外と壁の面積が限られている場所です。

靴箱があって、その上に少し壁がある。あるいはドアを開けて正面に小さな壁面がある。そういう構造が多いので、大きすぎる作品は入りません。

小ぶりな作品を靴箱の上にスタンドで立てる。あるいは中くらいの作品を壁に掛ける。このどちらかが多いです。

スタンドで立てる場合は、鍵置きや小物と並ぶことになるので、周りとのバランスも見たほうがいいです。作品だけが浮いてしまうと、かえって落ち着きません。

壁に掛ける場合は、目線より少し下くらいの高さが見やすいです。玄関は立ったまま見る場所なので、リビングに掛けるときより少し高めでもいいかもしれません。

サイズの選び方についてはレインボー般若心経のサイズ別ガイドにもう少し詳しく書きました。

湿気のこと

玄関で気をつけたほうがいいのは、湿気です。

外に面している場所なので、家のなかでは温度差が出やすい。冬場に結露が出る玄関もあります。雨の日に濡れた傘を置く場所でもあります。

紙の作品にとって、湿気はあまりいい環境ではありません。額装してあれば直接触れることはありませんが、それでも湿気の多い場所に長く置くと、紙が波打ってくることがあります。

対策としては、壁から少し浮かせて掛ける。額の裏にコルクやフェルトを貼って、壁との間に隙間を作るという方法があります。市販の額装用のクッションでも代用できます。

あとは、時々見てあげることでしょうか。半年に一度くらい、額を外して裏を確認する。それだけでも状態はかなり変わります。

もうひとつ、傘立ての真上は避けたほうがいいです。濡れた傘から上がってくる湿気が、いちばん近くに当たる場所なので。ほんの少し離すだけでも違ってきます。

玄関に般若心経を飾るということ

方角や大きさの話をしてきましたけれど、実際のところ、いちばん大事なのはそこではないような気がしています。

般若心経は、二百六十二文字のなかに仏教の智慧が凝縮されたお経です。ただ、それを毎回意識しながら玄関を通る方は、たぶんいらっしゃらないと思います。

普通に靴を履いて、普通に出かけていく。帰ってきて、普通に靴を脱ぐ。そのなかで、視界の隅に色が入ってくる。それくらいの距離感でいいのだと思います。

意味を理解しなければとか、ありがたく思わなければとか、そういう構えは要りません。ただ、そこに在る。眺めるでもなく無視するでもなく、日々の動きのなかにある。

以前、生徒さんが「何も考えずに眺めているだけで良い空間がある」と書いてくださったことがありました。玄関に飾るというのは、まさにそういう関わり方なのかなと思います。

朝、出がけに一瞬目が合う。夜、疲れて帰ってきたときに色が目に入る。それが積み重なっていくと、なんとなくその場所の空気が変わってくる。そういうものだと思っています。

般若心経という経典そのものについては般若心経とはに、色墨で書く作品についてはレインボー般若心経とはにまとめています。

迷われたときは

玄関に合う一点を選ぶのは、写真だけだと少し難しいかもしれません。

光の入り方も、壁の広さも、家によってまったく違うので。もし迷われたら、玄関の写真を送っていただければ、こちらから提案させていただきます。この場所ならこのくらいのサイズで、この色合いが馴染みそうです、というところまでお話しできます。

作品はレインボー般若心経の作品一覧からご覧いただけます。

玄関に置いてみたらどうだろう、と想像しながら見ていただけたらうれしいです。

この記事を書いた人

岩手県遠野市生まれ。外資系船会社勤務を経て、結婚・子育てをしながら書道の道へ。文化書道にて免許を取得後、板橋の書道大学で漢字・かな・古典臨書・般若心経を学ぶ。吉川蕉仙氏に師事し、日展入選2回、読売書法会幹事を務めるなど高い技術を持つ。2016年より田園調布にて「清景書道教室」を主宰。パリのジャパンエキスポ招待出展や、銀座・麻布十番での個展など国内外で活動。「日常に溶け込み、愛でていただける書」をコンセプトに、日常がより充実する書道教室を展開している。

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