書家・佐藤清景について|色墨で般若心経を書く書家の歩み

「虹の筆跡」のサイトを訪ねてくださり、ありがとうございます。書家の佐藤清景と申します。「清景」は書家としての号です。

このページでは、私自身の歩みを綴らせていただきます。書を仕事にするに至るまでの道のり、大切にしてきた学び、そしてレインボー般若心経を書き始めるまでの背景を知っていただくことが、作品を受け取ってくださる方との、より深い関係のはじまりになれば、と願っています。

岩手県遠野市に生まれて

私は、岩手県遠野市の生まれです。

「遠野物語」で知られる、山と伝承のふかい里です。子どもの頃、まわりには自然が広がっていて、季節ごとの色や光の移ろいが、日常のなかにありました。この土地で過ごした時間が、いまの私の作品に流れている色彩感覚の、いちばん奥にある源になっているのだと思います。

遠野を離れてからも、あの土地の風の匂いや、朝夕の光の入り方は、いまでも自分のなかにはっきりと残っています。

横浜の短大、そしてデンマークの船会社へ

学びの道は、横浜の短大に進むかたちで始まりました。

卒業後、私はデンマークの船会社に就職しました。書とはまったく違う世界で、異国の文化に触れながら働く日々です。当時は書道と関わりを持っていたわけではなく、まったく別の世界に身を置いていました。

書とは無縁のように見えて、この時期の経験は、いま作品を仕上げる際のふるまいの一部となっていると感じています。異なる文化のなかで働くこと、日々の仕事に真摯に向き合うこと。大人としての姿勢が、あの時間のなかで育っていました。

結婚を機に、書の道へ

結婚を機に、書道を本格的に始めることになりました。

生活のなかで墨を握るようになったとき、それまで感じたことのない静かな充実が、自分のなかに生まれていることに気づきました。子育ての忙しさから離れて、机の前で墨と紙と向き合う時間。そこには、他のどんな時間にもない集中と、静けさがありました。

書は、私にとって、日常のなかに開かれた小さな窓のようなものでした。母親としての時間と、書き手としての静かな時間。二つの時間を行き来しながら、少しずつ書の道へと入っていきました。

2005年、文化書道の指導免許を取得

書に本格的に向き合うようになり、まず文化書道で指導免許を取得しました。2005年のことです。基礎から筆遣いを学び、書の骨組みを身につけていく時間でした。

免許を取得することは、書き手としての一つの節目でもあります。学び続けてきたことが、次の段階へと踏み出せる形になった時期でした。

板橋の書道大学で、4年間の学び

その後、板橋の書道大学で四年間、書のさまざまな表現に触れる日々を過ごしました。

漢字、かな、古典臨書、そして般若心経の書写。それぞれの表現に固有の呼吸があり、筆の運びも異なります。四年という時間をかけて、書のさまざまな入り口を通り抜けたことが、後の作品制作の幅を大きく広げてくれました。

とくに般若心経の書写は、この頃の学びのなかで深く関わることになった経典で、いまも私の作品の中心にあります。二百六十二文字と向き合い続ける日々が、この頃から始まっていました。

2007年、吉川蕉仙先生に師事

書家として大きな導きをいただいたのが、2007年からの吉川蕉仙先生への師事です。

師のもとで学んだ時間は、書き手としての自分の骨格を作ってくれた時間でした。技術の細部から、書に向かう心のありようまで、多くのことを教えていただきました。

いま、私が一枚を仕上げるときに、無意識のうちに立ち上がる筆の運びのなかに、師の教えが息づいていることを感じます。書を学ぶということは、単に技法を身につけることではなく、書き手としての姿勢そのものを、時間をかけて育てていくことなのだと、あらためて思います。

2015年・2020年 日展入選、読売書法会幹事

学びと実践を積み重ねるなかで、2015年と2020年に、日展に入選をいただく機会に恵まれました。国内最高峰の公募展に二度入選できたことは、書家としての歩みの大きな節目です。

また、読売書法会では幹事を務めさせていただいています。書の世界の営みに、少しでも貢献できる場所に身を置かせていただけていることは、書家としてありがたく感じていることの一つです。

2016年、田園調布に「清景書道教室」を開く

2016年、田園調布にて「清景書道教室」を主宰することになりました。

教室の軸として大切にしているのは、「書きたいものを書いていただく」ということです。目標は人によってさまざまですが、どんな目標であっても、お手本に忠実であることは大切にしています。上手い下手ではなく、お手本をしっかり見られるかどうか。それだけで、書は確実に変わっていきます。

生徒さんは、まったく初めての方から、長く書を続けてこられた方まで、さまざまです。それぞれのペースで、書と向き合える場でありたいと願いながら、日々の指導にあたっています。書を通して新しい発見ができて、より充実した日常を過ごしていただけたら嬉しく思います。

2022年、レインボー般若心経の誕生と、パリへの出展

2022年は、私の作品にとって大きな転機となった年でした。

同年、東京のギャラリーyururi にて、「レインボー般若心経展」を初めて開催しました。それまで少しずつ書き溜めてきた色墨の作品群を、初めて一つの展示として世に出した場です。

そして同じ2022年、フランス・パリで開催された「ジャパンエキスポ」に招待出展の機会をいただき、現地での展示販売にも参加させていただきました。国際舞台への初出展です。ヨーロッパの方々が、じっと立ち止まって色墨の作品を眺めてくださる姿を、今でも覚えています。言葉を超えて何かが伝わっている、と感じた瞬間でした。

この2022年から、レインボー般若心経は本格的に、国内外で展開する作品群として歩み始めました。

国内での展示販売会

2022年以降、国内でもさまざまな会場で展示販売会を続けてきました。

2023年

田園調布・赤れんが倉庫・銀座にて展示販売会

2024年

恵比寿 弘重ギャラリー、自由が丘 STAGE 悠にて展示販売会

2025年

パレットギャラリー麻布十番にて展示即売会

2026年

ギャラリー銀座にて展示即売会(予定)

展示会は、作品を見ていただくためだけの場所ではなく、その場所の空気と作品が響き合う空間を作る営みだと感じています。会場ごとに違う光の入り方、天井の高さ、壁の色。それぞれの空間に応える一点一点を用意し、その場でしか成立しない世界を作ることが、展示会の醍醐味です。

会場でお会いする方々との対話も、展示会の大切な時間です。作品を前にして、どんなことを感じてくださったのか、伺わせていただく。その言葉が、次の作品を書くときの支えになっています。

「日常に溶け込み、愛でていただける書」

私がずっと大切にしてきたコンセプトが、「日常に溶け込み、愛でていただける書」ということです。

書は、展示会場だけで完結するものではありません。誰かの暮らしのなかに、静かに佇み続けるものであってほしい。日々目にして、少しずつ関係を深めていける書でありたい。そう願いながら、一点一点を仕上げています。

私の書は日常に溶け込んで、それぞれの日常で愛でていただけたら。それだけで、嬉しいと思っています。

これからも、書き続けます

書は、一生をかけて向き合える営みです。何十年書き続けても、まだ書けない一枚がある。まだ試したことのない筆致がある。まだ出会っていない色がある。

日々教室に通ってくださる生徒さん、作品をお迎えくださるお客様、展示会に足を運んでくださる皆さま。たくさんの方々に支えていただきながら、これからも書き続けていきます。

このサイトを訪ねてくださったご縁が、私の作品と皆さまのどこかで交わることを、心から願っています。

作品は「レインボー般若心経の作品一覧」からご覧いただけます。ゆっくりとご覧いただければ幸いです。